貴方の見ているドメインは

ドメイン www.andreas-reimann.net

このページについて

    「どうも、済んまへんでした」

    「さあ、どうぞ。ずつとお通り下さい」

    今泉は一寸いやな顔になりかけたが、

    「何でもいゝから早くしてくれ。路をまちがへて大廻りしちやつたんだ」

    「なんだつて、脳溢血?――そいつあ大変だねえ」

    「あゝ、えらかつたなあ」

    「ふむ、トンネルのハッパだな」

    ――だが、作者がこんな説明をしている間ぢう、房一はそこで愚図々々と立つていたわけではなかつた。何かしらあての外れたやうな気がすると同時に、房一は漠然と庄谷の気持を見抜いた。彼はそんなことで悄気しよげるやうな性質でもなかつたので、ほんの路傍の挨拶だけで別れると、さつさと上手に歩いて行つた。

    「居なくたつて訴訟はいくらでもできらあね」

    「へゝえ、わしらは用意がえゝですからね、あんな蜜柑箱みたいなもんはすぐこはれるにきまつてるから、家を出るときこゝにつけて来たんでさあ」

    「去年はなかつたんですよ。何でも博労ばくらう同士のうちわ揉もめがあつたとかでね」

    「どうでした」

    あのことだな、と房一は思つた。訊いてどうかな、とは感じたが、相手があまりさつぱりしているので、

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40